動物看護師のお仕事って?実はね…。4コマ漫画「いのぼんVT日誌」

動物看護師を目指す方へ

こんにちは、動物看護師、兼イラストレーターをしています。
美大を卒業後、すぐに動物看護師職にたずさわるようになり、現在までに至ります!

世間的に、動物看護師ってどんなイメージを持つ方が多いのでしょうか。かわいい動物達にたくさん会えて、落ち着いた清潔な院内、医療従事者って感じの白衣を着てたりしてなんか専門的でカッコイイ…?とか思われているのでしたら、ちょっと違うんです…( ̄  ̄)b

一昔前よりは、世間に知られる存在になりつつある動物看護師。とはいえ、この職業を全く知らない人もまだまだ多いみたいですよね。

「へえ〜、可愛いワンちゃん、猫ちゃんと楽しそう!」「え…そういう仕事初めて聞いた、なんかすごいね!」と言われたこともあります。確かに何がすごいのかわかりませんが(笑)やはり、人間医療の「看護師」のイメージがあるからでしょうかね。

ちなみに、実際に動物病院に行った時に見る動物看護師の姿って、受付カウンターで対応していたり、診察台の上で動物を支えていたり(保定)、処置の時に先生の手助けをしていたり、奥の方で検査機器を操作していたり…とか。表向きに見ることができる姿は、そのくらいかと思います。

動物看護師の4コマ漫画

いのぼんVT日誌

 いわゆる3K(キツイ・汚い・危険)

やはり、無傷ではなかなか務まらないお仕事です。恐怖で暴れてしまう動物達には、抱っこというより「捕獲」ですし、デンジャラスな場面に緊張感走ります…(T . T)

【咬傷・引っ掻き傷・感染症】

動物看護師は、「獣医師の診療を補助する」役割があるので、診察台の上で動物の体を支えたり、獣医師の処置がしやすいように動物の腕や足を動かないように固定したりする「保定」をします。

当然、爪や牙を避けられない場合もあるので腕や指などに傷がつきますし、小さい傷であっても咬みつかれた傷から重い感染症の危険もある仕事です。

犬や猫達の排泄物や吐物で汚れた犬舎の清掃や、血液や臓器、膿などで汚れた器具の処理なども勿論あります。仕事が終われば、とても白衣とは言えない薄汚れかた…( ;∀;)

どうしてもグロテスクな場面が多々ありまして、例えば、飼育環境が良くない動物の体にウジが大量にわいた状態であっても、間近で処置したりしなければならなかったり、事故にあった酷い体の救急動物を抱いて運ぶこともあります。

【長時間労働】

求人情報などでは、実働8時間とあるのをよく見かけますが、プラス残業時間が必ずと言っていいほどあるので、実際には少なくとも10時間以上かなと思います。

実際の仕事は、どう考えても診察中だけではないからです。預かっている入院動物が何頭もいるので、手当や処置、検査、犬舎内や汚れた体を洗ったりという仕事を、診察の合間をぬって進めて行かねばなりません。

それが終われば、午後の診察時間までの間に手術が入るわけなので、午前の診察が終わって夕方の時間までの間がポッカリ空いているわけではないのです。

作業が連続する中、休憩を取るに取れず、気づけば午後の診察開始時間…なんて日も良くありました。やれやれ一区切りつきそうだと思っていたら、時間外の急患が来てしてまう日も( ;∀;)

一般的な会社とは違い、動物相手の仕事なので、どうしても予定外の事が起こります。例えば、やっとのことで留置(静脈に点滴をつなぐ処置)したばかりの子が、数分後に点滴チューブを途中から引きちぎってしまって、全て一からやり直したり。排泄で汚れた体と犬舎(入院ゲージ)の掃除がおわったかと思っても、またすぐに下痢をして汚してしまうこともあり、再び体を洗い直さなくてはいけないことも。

このように決まった時間や自分の都合で作業を中断できない場面が多いです。予定通りに帰宅できるかと思いきや、仕事の終わりがけに緊急手術だって突如入ります。

実に、拘束時間は長く体力と気力のいる仕事…。入院動物の容態が時間関係なく変化するのはもちろんで、残業無しで定時でスパッと終われることは稀だとおもいます。

しかし、病院によっては、入院の受け入れや手術の件数がとても少ない病院もあるようなので、忙しさには職場によって差はありそうですね。

【休日】

今や土日や祝日でも開業している動物病院は増えました。普段はお仕事勤めという飼い主さんにとっては、土曜や日曜は助かりますよね。

やはり、平日より混み合うためスタッフ数も十分確保したいところ。そのため土日は休みにくく、どこの動物看護師もプライベートの休日は平日になりがち。

なので、プライベートで友人や家族と休みの予定が合わないというスタッフのぼやきは、わりと耳にします。働き始めは、平日のお休みでも気にならないようですが、やはりだんだん不満には感じるのではと思います。

若いスタッフなら、めでたくお付き合いする人ができたのに、なかなか会える日の都合がつかず…とか(T . T) 仕事帰りのデートといっても、その日の勤務も定時では終わることは稀ですしねえ。

 ご注意!動物より人と接する仕事です

昔より動物看護師の存在は知られてきたので、この職業を目指す人は増えていますよね。目指す動機や憧れたきっかけは何でしょうか。とにかく動物が好きだから?

しかし、ご注意!「人と話すのは苦手だし、もっと動物と関わっていたい」「かわいい犬や猫が好き!」と言うのが第一の志望動機の方は…、この職は辛く厳しいものかもしれません。

実は、動物ばかりを相手にしているわけではなく、人間のとのコミュケーションが8割近く占める印象です!動物は、その合間にちょいちょい登場する感じでしょうか。獣医師に関しては、飼い主さんとの会話にかなりの労力と神経を使っていますしね。気疲れすごいと思います!そして、動物看護師も飼い主さんとの会話や飼育指導をしたりと、人前に出て喋らないといけない場面は多いんですよ。

どんな職業でも人間関係は、実に重要。動物よりはるかに難しいですね…( ;∀;)先輩看護師や院長、勤務医の先生方との共同作業なので、いろんなタイプのスタッフとやり取りしなければなりませんよ。常に、スタッフ間のやり取りは欠かせないので、ギクシャクしてると全ての業務が地獄です。

やはり、辞めていく動物看護師の一番の理由は、職場の人間関係の辛さ!
よくありがちなストレスの種は、以下のパターンかなと思います。

⚫︎院長と合わない
⚫︎先輩動物看護師がきつい

…などなど、この辺りが定番です。ダブルパンチというより、同僚は皆良い人ばかりだが院長のパワハラが酷いとか、院長にはとても気に入られているが奥様との相性が悪いとか…その逆パターンとか。

どの職場でもそうだとは思いますが、スタッフ全員とパーフェクトな方なんていないですよね。ちなみに、勤務医の先生や同期の動物看護師と上手くいかず…というの案外少なかったなと思います。むしろ、同期の仲間の存在は、心強いものでした。

ちなみに、動物の死に立ち会うのがつらい、怪我が怖い…という理由で辞めていく方は、今のところ一人も会ったことがないです。私個人の意見です、ご参考に(´ー`)

たくさんスタッフがいれば、やり方や考え方が合わない人は必ずいます。反対に少人数過ぎても、決まったメンバーと長時間顔を合わせる毎日なので、逃げ場がなくて行き詰まりますよね…。

ちなみに、動物病院の場合、全く人間しか接しない職場よりは動物が間に入る場面があるため、人間関係がちょっと緩和される一面もあるように個人的には思っていますが…(^з^)

 病院によって違いがある

動物看護師がどのように活躍できるかは、職場の環境によって左右される面があります。環境というのは、その動物病院の雇い主(院長)のビジネス的な方針や動物看護師の役割の位置付けによって、様々な仕事内容が違うと言うこと。

つまり、その病院によって動物看護師の働く姿や雰囲気もかなり違いがあったりします。積極的に飼い主指導にも関わるところもあれば、ほとんど裏方で顔を出さない病院もあるようです。スタッフ指導に力を入れている病院もあれば、言われたことを手伝うだけの雑用係のような(言葉悪いですが)動物看護師の扱いもあるようですし。

とにかく、同じ病院で働いているとノリみたいなものが似てくることと、自然と同じ雰囲気の人が集まるように思います。本当に、病院によってカラーの違いがあると感じますので、単純に職場の相性ってあると思います。

【幅広い業務内容】

2021年現在、法律上で認められた業務内容の規定はないので、動物看護師が現場でやってよい仕事は、かなり曖昧なんです。「採血や留置」「点滴剤の投与」「薬剤の投与、調合」も動物看護師に行わせているかどうかは、病院によってバラバラなんですね。(現在は、このあたり全て法律上NG)

そして、その他の実際の仕事内容は多岐にわたります。診察補助や検査、入院動物のお世話以外にも、手術の準備から助手、在庫管理、洗濯、院内の掃除や片付け、ゴミ出し、草むしりまで結構なオールマイティ( ;∀;)

個人経営の動物病院の場合なら、病院全体を回していくための業務という感じなので、雇い主である院長が「これやっといてね」と言う内容は、実質全て任務ということになってしまうのでしょうか。

動物看護師は獣医師の「診療の補助」が一番の役割です。獣医師が最善を尽くして診療にあたれるようサポートし、診察時間をスムーズに回す事に力を注ぎます!獣医師と協力し、必要な検査や処置を動物の様子を見ながら無理のなく進めていくこと。(とにかく手早く済ますという意味ではないです。)

経営者である院長にとっては、動物の命を救うばかりでは病院の運営を維持できないのも事実。顧客を増やし経営利益が出なければ従業員へ十分なお給料も出せないわけですし。人気があって混み合うのは嬉しいことだけれど、飼い主を待たせ過ぎずスムーズに対応したいし、サービスも向上させて病院の評判も気になるところ。

なので、動物看護師が獣医師をサポートするのは、診療に関わる内容だけではなく、病院が上向きになるための業務全体に及びます。

【求められる能力】

病院によって違いがあるとお話ししたように、職場環境によって動物看護師に「求められる能力」にも違いがあるようです。簡単な作業だけをさせる病院もあれば、高度な内容まで要求とされる病院もあります。

どこまでを動物看護師にやれるようになって欲しいか、その辺りは、勤める病院(の院長の考え方)によって様々。そのため必然的に現場に出てからレベルの差が出てきます。

どんな動物看護師もこなせるような基本の毎日の業務は、1〜2年もすれば一通り覚えてしまうかもしれません。しかし、そこからさらに踏み込んでスキルを磨いていく人もいれば、特に勉強は継続せず現状維持の人もいます。同じ「動物看護師」であっても、人によって知識量や技術レベルにバラつきがあるのが現状です。

試験を通過して得られる資格はあっても、複数の民間団体がそれぞれに認めたもので、履修内容にも違いがあったりして足並みが揃っていなかった…。

それではいけないということで、一定ラインのレベル統一を目指して、動物看護師の資格に関しての協議が続けられてきました。そして…

遂に動物看護師が国家資格化

2022年に5月1日に施行される「愛玩動物看護師法」

この政令で、「愛玩動物看護師」という新たな呼び名で国家資格化が決定!専門職として社会的に確立されようとしています。国家資格が新たに作られるなんて、すごい進展ですよね(^-^)v

今までは、複数ある認定団体がそれぞれ資格を認定していたため、教育内容や合格基準も様々でした。そこで全国で統一された基準の認定制度が必要とされ動物看護師統一認定試験(一般社団法人・動物看護師統一認定機構が発行)が行われるようになったのですが、これも2012年からの比較的新しい試験ですし、まだ民間団体の資格だったんです。

しかし今後は、新しく誕生する国家資格「愛玩動物看護師」の資格名だけが呼び名になるんですね!

なので、この公的な資格がなければ、動物看護師を名乗ることは違法になるので…「愛玩動物看護師」に似た紛らわしい名称の使用もは不可だそうです。試験に受かるまでは、愛玩動物看護師の「助手」とか?「動物病院に勤務しているスタッフ〇〇さん」とかになるんでしょうか??( ;∀;) 試験、何としてでも合格せねば…心配です。

ちなみに、その他アルファベットの略称として…
VT  (ベテリナリー・テクニシャン)
VN(ベテリナリー・ナース)
AHT  (アニマル・ヘルス・テクニシャン)

なども呼び名としてありますが、現在は「動物看護師」のことは、地域や団体によって様々な呼び方になっている状態です。新しい国家資格の「愛玩動物看護師」はまた別の略称にしていくのかも知れませんよね。

国家資格「愛玩動物看護師」の業務独占

2020年現在、獣医師と違って動物看護師に関する法律は…無いに等しい状態なんです。

なので、仕事の内容も関わる範囲も、その病院によってまちまちで明確に定まっていない!その病院の方針(院長や経営者の意向次第)によってバラバラです。

とにかく慌ただしい病院の診療業務を少しでも回していくために、「獣医師をサポート」してほしいという感じでしたので、本来なら法律で許可が出ていない「採血や採尿、留置、注射」「レントゲン撮影や麻酔」などを、実際の現場では獣医師の指示を受けて動物看護師が手伝う場面も…(小声)

そこで、「愛玩動物看護師」という国家資格が誕生することで、曖昧だった動物看護師の業務が法的に明確になりました!

診療の補助
②愛玩動物の看護
③愛護・適正飼養に関する助言等

この3つの業務のうち愛玩動物看護師の業務独占と規定されたのは①診療の補助です。

今まで、動物看護師ではNGだった採血や採尿カテーテル、マイクチップの挿入など、一部の診療補助が正式にできるようになるんですね。(業務独占とは、特定の資格を持った者でなければ行えないとされる業務です。)

現場のレベルに合わせて育っていけば、獣医師にとっては少し業務の負担が減るだけでなく、動物看護師の職場でのモチベーションに繋がりますよね、きっと。

「診療の補助」という内容がとても曖昧で不明瞭だったものを、新しく施行される「愛玩動物看護師法」で動物看護師の役割を明確にし、これからは公的に認められた業務に!

正直、国家資格という割に業務独占の範囲が狭い印象もあるのですが…、新しい権利が与えられたことには間違いないので、今後の動物看護師の将来に期待したいです!

そして、当然ながら今まで以上の責任が伴うことも肝に銘じなければ…。

私が動物看護師を始めたきっかけ

実は、誰でも動物看護師と名乗れる時代がありました。

一般的には、動物看護師として働く通常ルートとしては、動物看護専門の学校を経て動物病院に勤務するパターンがほとんどです。しかし、私は専門学校の出身ではありません。

え…なれるの?というか雇ってもらえるの?という疑問だとは思いますが、働けてしまうのです(¬_¬) 私の場合は、働きながら現場で勉強し民間団体の認定資格を取得しましたが、それ以外は動物看護師であるという証拠もない…というか。

しかし、人手不足の病院は実に多く、面接で「ええ?美大生なの⁈うーん…Σ(-᷅_-᷄๑)まあいいや、とにかく何でもいいから手伝って‼︎いつ来れる?」という流れで、やる気と根性だけで仕事を乗り切り、バイトから正社員に採用された感じでなんです。

なぜそんなに人手不足だったかと予想すると、動物看護師の離職率がすごい高かったからであろうなと思います。私が初めて就職した病院も、その当時1年以上続いた人がまだいなかったそうです。

そして、動物の診察や検査って何かと人員が必要なんですね。犬が診察台の上でじっとしているわけではなく、自分から採血する腕を出してくれるわけでもないので動物看護師1〜2人が動物の体を制御します。(基本、人間の場合は、患者さん一人に対し、看護師一人だけで採血や検査が可能ですよね)

さらに、その間に検査機器を操作する人が必要だったり、大型や暴れる動物であれば1頭に対し3人以上が対応することも多々あリます。

突然、動物看護師に…

十数年前、美大を卒業間近のころ、就職先も決まらないまま「私って何が描きたいんだか…、芸術のセンスはないかもね〜。絵以外で得意なことや資格もないしなあ」という状態でした。

別の他の世界を探し始めていた時に偶然知ったのが「動物看護師」という分野で働く人のこと。始めて訪れた動物病院で、獣医師以外に何やら働いている人がいる…。きっと獣医師の見習いか何かで、現場を勉強している人なのかと思っていたくらいです。

「動物看護師」というワードすら見聞きしたことがなかった時代。もちろん私の周りでも知られておらず、面白そうな新しい世界を見つけてしまった!という感動でした。私だって絵を描く以外に何かができるはず、いや、やってみたい。やってみせる!(ここでは絵を描かなくて済むし)要するに、美大での才能のなさに逃避行動したかった…という٩( ᐛ )و

当時、すっぱり絵を描くことを休止して、動物看護師職に没頭しました。何もかも初めてでしたが、余計なことは考えず、(その病院のやり方の)全てを吸収していくつもりで勉強しました。いわゆるブラック企業の動物病院だったので大変でしたが、来院する動物たちの看護も全てが新鮮で楽しかったです(^.^)

電話帳と地図を頼りに職探し!

私の場合は、例外パターンというか…一般的な就職ルートでないので一つの参考程度にお願い致します。専門学校生であれば学校に求人情報が来たりするのでしょうが、私の場合は、もう飛び込みの就活。

今でこそ街中に動物病院は増えましたし大きな建物で設備も充実したが、20年近く前なんて近所にあるかないか、ポツンとひっそり建っている感じの病院ばかり。2000年頃はまだインターネット普及30%くらいの時代で、ホームページを持ってる動物病院もほとんど無かったと思います。ほんと情報がなかったのです!

そもそも、ネット検索使用にも、ただでさえアナログ人間だった私が自分のパソコンを持っているはずもなく…。地図を頼りに病院名から電話帳で探し出し、従業員募集中かどうかをダメもとで電話をかける!という就職活動(°▽°)

よく恥ずかしくなかったなと我ながら思いますが、まだ若かったのと今後の自分の新天地を探したくて必死でしたので、決意は強かったのは確かです。

動物看護師を始めてから感じたこと

ところで、現場で働き始めてから私の中で変化していった考え方があります。

動物看護師を始めた頃の私は、病気さえ治れば動物は幸せで、治ることこそ動物のためだと信じていたのです。動物にどんな我慢を強いてでも、治療を完結することを優先しなければならない、それが務めだと思っていたのですね。

しかし、現場で働くうちに動物医療が基本的に人間都合で成り立っていることを感じていきました。(気を悪くした方いたらすいません、私個人の意見です)

つまり、治療とはいえ動物に与えてしまう精神的苦痛について考えるようになりました。

状況が理解できず、攻撃的になってしまう動物たちに対する現場の扱い。治療での経験がトラウマになり、その後飼い主さえ触れなくなる子など…。

もちろん、当然のことながら治療の成果が出れば、動物のためになったことは事実ですが、事例によっては必ずしも動物のために行なっているとは言えず、人側の理由や都合があることは否定できないと思います。

私たちが良かれと思っている動物医療は、果たして動物にとって何なんだろうという疑問でした。

そして、この疑問のおかげで私は、動物看護師を続けてこられたと感じています。

【動物にやさしい診察とは?】

病院に治療するために連れてこられた動物達は、診察行為に抵抗する場面が多々あります。それも当然で、ここが一体どこで、今から何をされるのか理解できないからです。彼らの心理状態は、私たち人間が思っている以上に不安と恐怖でいっぱいいっぱい…。

♦知らない人(獣医師や動物看護師、トリマー)
♦慣れない場所(動物病院)に行れて行かれる
♦診察台の上で身動きが取れない(診察や検査時の保定)
♦意味のわからない行為(爪切りや耳掃除・点眼、採血など)

処置が始まる前で、まだ痛いはずはないのに犬や猫が嫌がって抵抗するのは、このような恐怖の感じ方があるからです。それを常に意識して診察に入る必要があります。

「そんなこと言ってたら、何も治療ができないじゃないか」という話ではなく、人間都合で成り立つ動物医療だからこそ、動物へのストレスを最小限にすることを、もっと配慮した方が良いという考えです。

この配慮とは、その動物の性質や習性を知り、恐怖の感じ方や行動の意味を理解すること。

攻撃的な行動をできるだけさせないようなアプローチ方法、スキルや知識を人が学んでいくこと。

そのためには、犬などの学習理論(学習の仕組み)基本的な動物行動学や行動分析学などの知識が、動物病院のスタッフにも必要です!そして、獣医師や動物看護師、スタッフ皆で共有し、病院全体で実践していくことです。

突然連れてこられた場所で理由もわからず押さえつけられ、針を刺されたりするわけですから「体罰」に近い恐怖を感じていることでしょう。必死で抵抗するのは、自然な行動であり、決して人間に逆らいたいからではないということ。

しかし、かわいそうだからと言って何も手出しができないわけではありません。動物がおかれた環境を考えることや、診察時の動物への対応を学ぶことで処置を受ける動物の行動は変わっていきます!動物医療の行為をする者(獣医師や動物看護師)と動物、そして治療を望む飼い主、双方にメリットが生まれます。(^ ^)

【病院嫌いを予防しておく】

「犬が動物病院を嫌がるので、連れて行くのが大変」「暴れるので、保定者が数人がかり」「必要な検査ができずに中断した」「心臓が悪いのに、病院に来ただけで興奮させてしまう」…などは現場で度々見られる光景です。

そこで、動物病院で行われるパピークラスというものがあります。まだ病院を苦手になっていない子犬や子猫のうちに、積極的に動物病院の環境を学習させておくというもの。また、家庭での日常ケアや健康管理など、飼い主さんが動物の習性や性質を正しく学ぶために非常に重要です。

病院嫌いを予防しておくとで、診察は格段にやりやすくなります!動物が必要以上に抵抗したり、攻撃してきたりすることが激減するためです。

とはいえ動物病院での診察は、どうしても不快や痛みを伴う場面ばかり…必要な処置であれば避けられないことも。病院嫌いでない子でも、大きなストレスを感じて抵抗することはあるでしょう。それでも、病院嫌いを予防してきた子は、そのストレスからの回復が早いようです。

そして、むしろパピークラスは、子犬や子猫が教育されるというよりは、飼い主さんである人間側が勉強する教室なんです!犬や猫の習性を理解し、正しい知識を持ってもらうこと。

また、動物病院で取り組むことでスタッフ全体の知識の共有が必須になり、診察現場で的確に動物を扱えるようになるはずです。

【動物への配慮で良い効果が連鎖する】

動物へのストレスを最小限にすること、その方法を理解していることは、これからの動物看護師に必須のスキルだと思っています。

動物医療において、治療するという形で動物を救う獣医師とは違う役割で、動物看護師の存在があります。

獣医師の治療を動物が落ち着いて受けることができるよう、保定の技術を高めることであったり、動物行動学や動物の応用行動分析学といった分野に目を向け、動物の接し方に生かしていくなど…。動物看護師は、動物に配慮した獣医療に貢献できると思います。

そして、結果的に治療中の動物への負担を減らすことができるばかりでなく、スタッフの安全や業務効率化、何より動物病院のメージUPとビジネス的にもメリットが!

何より、彼らが暴れたり攻撃性がでることを抑えることができるので、よりスムーズに安全に治療行為を進めていくことができるはずですよね。動物看護師や獣医師のケガ、作業時間や人手がかかるという労力も減らせます。

診察室でのアプローチの仕方や攻撃性へ予防など、動物行動学や動物の応用行動分析学といった分野を重要視して、スタッフへの教育に力を入れている病院も増えています。今よりもっと「動物のための動物医療」に近づけることを目指していけたら良いですよね。(^。^)