ペットの心肺蘇生【心臓マッサージ】のやり方
目次
犬や猫の救急法・胸部圧迫について
今回は、一次救命処置での動物の胸部圧迫の方法について解説します!
自宅でペットが倒れているのを発見したら、誰しもパニックになるかもしれません。しかし、もしもの時のために正しいやり方を知り、日頃からイメージしておくことは、必ず緊急時に役に立つはずです!⇒バイタルチェックと人工呼吸のやり方についての記事はこちら
心臓マッサージとは言え、実際に心臓をマッサージしているわけではないので、正しくは「胸部圧迫」と呼びます(^^)/
ちなみに、人の救急では仰向けで行うため、胸骨と言う部分を圧迫しています。そのため、「胸骨圧迫」と通常呼びますが、犬や猫の場合では横に寝かせた体位(横臥位)がほとんどで、胸骨の圧迫というわけではないので、「胸部」と表現しています。(ブルドッグなどの体型では、人のように仰向けでおこなうので胸骨圧迫にはなりますが)
圧迫方法のタイプ別
心臓の位置のちょうど真上から刺激して、心臓を最大限に圧迫する 心臓ポンプ理論 と、心臓の真上ではなく、胸部面積の一番広い所を使って胸郭を最大限に圧迫する 腔ポンプ理論 があります。
上の図にもあるように、動物の場合、体型や胸部の形をみて効果的な圧迫方法を選びます。ご自身のペットはどのタイプでしょうか。
●超小型~子猫、子犬など
胸部の周りを片手で挟むようにして、心臓の位置を圧迫(心臓ポンプ法)
●小型~中型(20㎏以下)
床の上に寝かせた状態にして、肩ら両腕に体重をかけて心臓の上を圧迫(心臓ポンプ法)
●大型~超大型犬
心臓の真上ではなく、胸部面積の一番広いところを中心に圧迫(胸腔ポンプ法)
●胸郭が「たる型」の犬種
ブルドッグなど胸が丸い体型の場合は、仰向けで一番胸壁の高い位置から圧迫(心臓ポンプ法・胸骨を圧迫)
心臓の位置
動物の前肢を体側に曲げた時に、肘が当たる位置がほぼ心臓に近いです。胸を横から見て一番高い位置など。
ちなみに、心臓は左側寄りなどとは言われてますが、ほとんど中央に近いので右下・左下など体を横に寝かせる向きは、あまり気にしなくて大丈夫です。倒れている発見時の体勢から、あえて向きを変える必要まではありません。
そして、心臓の位置は体の正中ではなく胸部前面の外側に近い場所にあることも知っておきましよう。意外と押しにくいフチ側にあります。普段から抱っこなどをした時に手の平を胸部に当てて、強く鼓動を感じる位置を確認しておきましょう。
基本の圧迫方法
① 圧点に手を置く
片方の手にもう一方の手を重ねて、圧迫する点に力を集中させます(指は重ねた方がずれにくい)
アプローチする時は、動物の背中側から肩から肘をまっすぐ垂直に、自分の上半身の体重を使ってしっかり圧迫します。
肩の位置を意識してもらうと、思った以上に前のめりの姿勢になのがわかると思います。
② 圧迫する強さ
押す強さは、体幅の約3分の1の深さを基本に。手首に近い手のひら部分の面積を活かして圧をかけます。この時、動物を平らな床の上に寝かせて行うこと。
やわらかいクッションやベッドの上では、圧迫の力が効果的に心臓に伝わりません!
また、高さも重要です。床の上などで立ち膝をして実施するのが一番やりやすいはずですが、高さが合わず肘が曲ってしまうのであれば、自分が台に乗ったりして調節する必要もあります。
その子の身体の厚さの 1/3程度を目安に
●中型犬や大型犬…約5~7.5㎝
●小型犬や猫…約2~3㎝
●超小型犬や子猫など…約1.5~2㎝
※できるのであれば、頭部側を低く保つと能へ優先的に血液を送れます。
③ 1分間に100回以上で圧迫する
速さは、1分間に100~120回のペースで胸部を圧迫!実際に練習してみてもらうとわかるのですが、なかなか早いリズムです。
→ 100回/分のリズム 心肺蘇生で有名なテンポ「アンパンマンマーチ」「ドラえもんのテーマ」を思い浮かべてもらうと、これが約100回です。
実際に120回ともなれば、かなりのハイテンポ→120回/分のリズム かと言って、むやみにこれ以上早すぎても正しく圧迫できないため、1分間に100回以上を目指すイメージでよいと思います(^^)
④ 2分間は絶え間なく連続して
自己心拍を再開するためには、心臓自身の血管に血液を送る必要があります。2分間以上中断せず行わなければ、その血流圧が維持できないからです。生存率UPと脳へのダメージは抑えられる可能性が高まります。
一人でおこなう場合は、「連続で30回圧迫→人工呼吸2回」を1サイクルとして×5サイクル…を約2分間継続です。(人工呼吸のタイミングでの圧迫中断は、数秒以内を努める!)
ちなみに、救助者が2人以上いるのなら、「2分間連続圧迫+同時に人工呼吸10回/分」…を2分間続けてからバイタルチェック→疲労を防ぐためこのタイミングで交代→を反応があるまで同じく続けます。
この「鋭く・強く・絶え間なく・100回/分以上のテンポ」を維持するのは、かなりの体力を使います。どうしても疲労により圧迫が効果的に継続できなくなりがちなのが注意点です。押した心臓をしっかりと元の大きさに戻す(再拡張させる)解除を意識してマッサージをすること、この動作を正しく行うことは重要です!
⑤ 脈・呼吸・意識の再確認
2分間周期の後、迅速に6秒以内(遅くて10秒以内)で動物をチェックし反応が現れていなければ、また2分間連続で(もしくは5サイクル)心肺蘇生を繰り返します!
ポイントとまとめ
心臓を3分の1の深さまで押したら、その形を元に戻すイメージでしっかり解除をすることがポイントです!
どうしても疲れてくると動物側に寄りかかりぎみになるため、心臓が押されてばかりになりがちです。圧迫で血液を押し出しても、心臓が拡張されなければ中に血液が戻ってこれません。また心臓内に血液が溜まらなければ、次の圧迫では空の心臓を押しているような状態になってしまい、血液がうまく送り出せません!
このような疲労による「胸部圧迫効果の減少」を避けるために、2分間周期で救助者を交代することが望ましいです。
●強く圧迫+しっかり解除
●肩、肘、手首を垂直に
●心臓の位置・動物の体格別の圧迫方法
●胸の高さ1/3の深さ(~1/2程度)
●硬い平らな床の上で
●絶え間なく・鋭く・強く・速く
●100回/分(~120回)
参考文献…最新の犬猫臨床例における心肺蘇生ガイドライン「RECOVER」2012年
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